LANDCRUISER 77というくるま
LANDCRUISER 良い名前だと思う。
どこか地球上の未知の世界に走って行ける。そんなイメージが湧いてくる。
車の免許を取得した頃は、日本は好景気で、まだバブルという名も無い時代だったと思う。今より荒削りで、いろんな事に勢いがあった。
そんな頃だったから、今風のSUVという呼び方もなく、この手の車は四輪駆動車とか、ジープとか言われていた。自動車の多くは後輪駆動車で、コンパクトな車は前輪駆動が多かったと思う。カローラもセリカも後輪駆動だった。
どこかでそんな四輪駆動車を見かけたのだろうか、いつからかそういう車に乗ってみたいと思うようになったのかも知れない。2ドアクーペというより、ガラガラ音を立てて走る、四輪駆動車に憧れを抱いていたように思う。
そのうち、空前のスキーブームに巻き込まれて、毎週のように雪山に出かけたりしていた。そんな頃、渋滞の高速道路でよく見かける車は、ハイラックスサーフやパジェロ、ビックホーンと言ったスタイリッシュな4WDで、世間の若者の間でもだんだんと憧れの車として認識されるようになってゆく。この頃は『ヨンク』という呼び方が普通だったと思う。
多くはオーバーフェンダー付きで、タイヤはゴツくて太く、車高は少しリフトアップするのがカッコ良いとされた。上級モデルはグリーンやブルーのツートンの設定があって、33ナンバーのオートマチックが主流になっていった。ファミリアやセリカのような2ドア車にもフルタイム4WDの設定が登場し、だんだんとワークホースとしての四輪駆動車は忘れられてゆくようだった。
バブルがはじけ、その後長く続く不況の時代になって、そんな頃に僕は、当時乗っていたJW11ジムニーからランクル77に乗り換ようと思った。
ジムニーですっかり四輪駆動車の素晴らしさにハマって、憧れのランドクルーザー、これしかないと思っていたから。
満を持して神奈川トヨタの店に行くと、僕は遠慮がちに「ランクル欲しいんです。」と言った。
プラドですか?と言いながら、勝手にパンフレットを取ろうとする店員。
当時のプラドはランクル70をベースにハイラックスサーフの駆動系とコイルリジットの足回りに換装された、言わば「格下」のランクルだった。
地球の果てに…と言うより、
それは、週末のスキーやサーフィンに快適な装備満載と言う点で、すでに違う方向に歩き始めた、オシャレな弟分だった。
違います、プラドじゃありません!と言うと、やや訝しげに「あっ、80ですか?」と返して来た。80は今の200系に続く、高級車路線のランクル。
違います、バンです。ワゴンじゃなくて77のバンです!と言うと、バンですか、すみませんでした。いやぁ、これは乗り心地悪いですよ、それに展示車がないんですが……、
と、延々と話しているので、車、売りたくないのかよ。と、思うほどだった。